【思い出】エミュ鯖で僕考していた話(後編)

前回からの続き。

凄いエミュ鯖を見つけた僕は、自分でエミュ鯖を構築するという危ない橋を渡らなくても、そのエミュ鯖の管理人に、僕のかわりに妄想を実現させればいいのではないかと考えた。

その方法なんだけど、この鯖では珍しいことに、アカウント登録の完了時に専用のSNSのアカウントも渡されるようになっていた。鯖のお知らせや、フォーラムはそのSNSを通じて提供されており、FF14のロードストーンみたいに日記を書くといったことも可能だった。そのSNSにはもちろん要望掲示板といったものがあり、僕は試しに要望を一つ書いてみることにした。

内容はオリジナル武器の提案。本鯖で遊んでいたころに考案したユニークなビルドを再現させたかったんだけど、この鯖では個性的なオリジナル武器が多数存在しており、既存武器とは比べ物にならないぐらい強かったため、ビルドとして成立させるには、専用の新しい武器を実装する必要があった。

早速要望掲示板に書きこむと、しばらくして返信が返ってきた。内容はログが残っていないのでよく覚えていないんだけど、たしか『既存武器でも装備したら? それで満足できないなら、本鯖で遊んだら?』みたいな内容だったと思う。

僕としては軽くジャブを入れたつもりだったんだけど、返ってきたのは重たいボディブローだった。下調べとか全くしていなかったので、この管理人がどんな性格をしているのか全く知らなかったのだ。ただ、こんな冷たいコメントが返ってきたにも関わらず、僕はショックを受けるどころか、逆に 『絶対この管理人に作らせてやる』 と、やる気を燃やすこととなった。

しかし、第一印象は最悪で、今の状態はとてもまずいものだった。というのも、人は一度意思表示すると、簡単に考えを覆すことが出来ない。それはプライドが高い人ほどそうであり、これだけのエミュ鯖を構築したからには、相応のプライドがあると思われた。

今回の件も、一度拒絶の意思を示されている以上、僕が新たに要望を出しても簡単には受け入れられない状態にあることは容易に想像出来た。つまり、何とかして警戒を解く必要がある。

そのチャンスはすぐにやってきた。ある日、掲示板で理不尽な不満をぶつけている人がいた。こういう人は大抵どこのMMORPGにもいるものだけど、(むしろ同一人物?w)登録制の閉じられたエミュ鯖で発生するのはとても珍しい。しかも、注意する人が誰もおらず、反応が無いことに不満を感じたのか、それとも調子づいたのか、さらにヒートアップしている様子だった。

普段の僕は、こういう輩とは関わろうとはしないのだけど、これは絶好のチャンスと言えた。僕は彼を信用回復の為の生贄にささげることにした。具体的に何をしたかなんだけど、彼のコメントの矛盾点や、視野の狭さを、分かりやすく丁寧に説明したレスを付けた。

すると、他のプレイヤーも僕に続き、怒涛の荒らし叩きにつながった。みんな彼に対して不満に思っているのだから、きっかけと武器(論理)を与えるだけで後は何もする必要が無かった。その時の僕の気持ちはまさにこんな感じ。

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彼は僕らを管理者の取り巻き認定すると、捨て台詞を吐いて去っていった。別に取り巻きでも何でもないんだけどね……w この件で、管理者が表に出ることはなかったんだけど、好感を得たことは間違いないと思う。

次にやったことは、普通のプレイヤーに溶け込むことだった。具体的には、ゲームで遊び、フレンドを作り、プレイ日記をつけるといったこと。それもただ遊ぶだけじゃない。サーバートップクラスの廃人と呼べるレベルまでやり込んだ。

さらに、プレイ日記には、普通の日記以外にもいろいろ検証したデータを書き、さらっと僕考を織り交ぜるようにした。

エミュ鯖の構築なんてしている人間だ。自分の作った鯖のガチの廃人による検証データや意見は無視できないと思った。少なくとも僕ならそうだろう。

そうやって遊んでいると、狙い通り僕の僕考に対して管理者のコメントが付くようなり、それが採用されるようになった。味を占めた僕は、小さな僕考から、新規システムの考案や、既存システムの大幅調整案といった大き目な僕考へと切り替えていった。

これが本当に面白かった。今までの僕は、不満や妄想を膨らますだけで終わりだったのに、ここでは要望が実現するのだ。これが面白くないわけがない。

長年ゲーム業界にいたけど、ここまで夢に近い仕事をしたことは無かった。(1円にもならないから仕事とはいえないんだけど……w)というか、元々満足できるゲームが無かったから自分で作ろうと思っただけで、僕の原点は高校時代から続く僕考なのだ。それが実現するなら、自分で作る必要は全く無い。この時の僕は、ある意味夢をかなえたと言っても過言ではなかった。

結局、実現した僕考は5つか6つぐらいだったけど、没になった案はほとんどなかった。本当はもっと要望を出したかったんだけど、タスクを積みすぎると逆効果なので、いつ日記を更新するかウズウズしていたのをよく覚えている。

しかし、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。

ある日、オリジナルシステムに関わる小さな不具合が見つかった。すると、その不具合の検証が始まり、大切なアイテムをロストする人が現れると、その身内が中心となり、詳細な検証が行われるようになった。そして、今度はデュープ(厳密には不正強化)が可能だということが判明する。不幸なことに、その日管理者はおらず、サーバー内で存在感の高まっていた僕に報告が集まった。

これは巻き戻しが発生するのは確実だと思った僕は、今金策やトレハンをすると時間が無駄になってしまうので、親切心から、『巻き戻しが発生するかもしれないから注意してください』 と、全体アナウンスをした。これがまずかった。

巻き戻しが発生することで、頭に血が上った他のプレイヤーが僕も当事者だと勘違いし、それを管理者に報告したのだろう。今回の件で検証を行ったプレイヤーはみんなしばらくの間アカウント停止処分を受けることになったんだけど、僕まで処分を受けることになってしまった。

これは非常にまずい事態だった。アカウント停止処分に関してはいずれ解かれるからいいとしても、このままだと、管理者だけでなく、他のプレイヤーの印象まで悪くなってしまう。それは僕考が採用される可能性がほぼなくなることと言えた。

僕は日記を通じて弁明記事を書いた。しかし、誰かに見られる前にすぐに削除した。管理者が今回の件で面倒なことになるならリセットすると言い出したからだ。自己弁護しても、頭に血が上ったプレイヤーは信じず、火に油をそそぐことになるかもしれない。それに、僕が管理者の間違いを指摘したら、管理者からの印象を悪くしてしまう。それでは意味が無い。

僕は、第3者の介入に運命をゆだねることにした。具体的には、僕と一緒にいて、僕が何もしていないのを見ていて、僕だけ処分を受けたことを知っているフレンドたちに、僕が無実だと証言して欲しかった。

しかし、フレンド達はとばっちりを受けるのを恐れたのか、何も語らなかった。その時の僕の気持ちはこんな感じだ。

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ただ、思わぬところから声が上がった。それは、僕のフレンドではないけど、今回の件に関わったプレイヤーの一人だった。まさか、フレ達が沈黙している中、フレ以外から助け舟が出されるとは思わなかった。

彼は自身の反省記事の中で、僕が今回の件と関係ないと書いてくれた。しかし、1文では声が小さすぎた。というか、それに続いてフレ達が助け舟を出してくれればよかったんだけど、彼らはやっぱり何も語らなかった。

僕はというと、ショックで萎えていたし、今さら弁明するのもプライドが許さず、何もしなかった。結局、誤解が解かれることは無かった。

その後、アカウント停止処分は解かれたんだけど、すぐに別のエミュ鯖の管理人とプレイヤーが逮捕されたというニュースが流れ、このエミュ鯖も逃げるように閉鎖されることとなった。

ここまでが、僕が僕考を初めて公開した時のエピソード。しかし、まさかプレイヤーまで逮捕されるとは思わなかった。でも、エミュ鯖に手が出せなくなる前に、こういったことが出来て本当に良かったと思う。

最後はグダグダだったけど、僕にとっては大切な思い出だw

そして、この経験から、僕はこれを本職に出来ないかと考えるようになった。
その話はまた別の機会に書きたいと思うw

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